子午線のまちとグリニッジ天文台の苦悩


 建設省国土地理院が人工衛星を使った世界基準の測地系に合わせて緯度・経度の位置を見直す準備をしているのをご存じだろうか。

 測量法は1949年に制定された。国土地理院は明治時代から使っている日本測地系による測量を採用している。現在の基準は東京・麻布台の「経緯度原点」と東京・永田町の「水準原点」となっている。しかし、米国やカナダなど十数国で世界基準が採用されており、日本も世界基準を採用する必要が生じている。、

 そして、世界基準に合わせると緯度と経度がそれぞれ12秒ずつずれる。日本列島体が北西へ約450メートル移動し、ゆがみの補正も実施される。

 このため、東経135度の子午線上に日本標準時を示す大時計がある兵庫県明石市をはじめ、「子午線上市町村交流会」を組織する5市11町は、建物やモニュメントと世界基準とのずれが生じることに困惑している。

 明石市立天文科学館は阪神淡路大震災で崩壊した建物を復旧し1998年3月15日に再オープンしたばかりであり、子午線上で最南端の兵庫県東浦町も1998年3月に東経135度の位置にモニュメントを建てたばかりである。

 測量法の改正案は1999年に国会に提出され、今後10年位をかけながら見直し作業がすすめられる。

 一方、グリニッジ天文台も生き残りが瀬戸際となっているという。グリニッジ天文台は1675年にロンドン郊外に設立され、世界の時刻の基準になるグリニッジ標準時(GMT)を生んだ約300年の伝統を持つ天文学会の名門である。しかし、資金不足などで世界的レベルの宇宙研究や観測機器の開発などを続けていくことが難しくなっている。約100人の天文台スタッフが10人程度に減らされて小さな研究所としてケンブリッジ大学の傘下に入る可能性があるという。

 2000年の到来を目前にして、グリニッジ天文台も子午線上のまちも大きな転機にたたされているのである。グリニッジ天文台がケンブリッジに移転してから旧天文台も博物館になっている。はたして、西暦2100年にもグリニッジ天文台が世界の時刻の基準となっているのだろうか。


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