ミレニアムとセンチュリー


辞書でミレニアム(millennium)を調べると、「千年間、千年期、至福千年(キリストが再臨してこの世を統治するという神聖な千年間)、千年祭、特に幻影としての黄金時代」とあります。このように、ミレニアムにはさまざまな解釈があります。

 今から千年前、ミレニアムは西暦1000年を意識しており、西暦1001年を意識していたわけではないのです。ミレニアムは千年王国でした。したがって、もうすぐ訪れる西暦2000年および西暦2001年でもミレニアムは、西暦2000年を意識しているのです。

しかし、センチュリーの概念がキリスト生誕の数百年後にできたように、二度目のミレニアムを人類が経験することとなり、初めて、暦の単位としてのミレニアム(千年紀)を位置づけることが可能となり、第三ミレニアムの始まりは西暦2001年であることが明らかになりつつあるのではないかと考えられます。ミレニアムの訳に「千年祭」などに加えて、「千年紀」という意味が付加される時が来たのです。

 西暦が日本に定着したのは実は今世紀になってからで、日本にセンチュリーという言葉が定着してまだ百年たらずであります。ミレニアムという言葉にいたってはほとんど知られていないのが現状です。例えば、1901年1月1日に福沢諭吉は20世紀の始まりを祝いました。その目的は、20世紀の始まりは1900年ではなく、1901年であるといった認識を明らかにすることにあったといいます。

 ミレニアムという言葉は、千を意味するラテン語のミルからきています。センテニアルが百年祭、百年間を意味するのに対して、ミレニアムは千年祭、千年間のことなのです。

 ミレニアム、つまりは千年王国の概念はヨハネの黙示録第二十章第四節六にある。「キリストが再臨したあと地上にメシア王国を建て、最後の審判前の千年間そこを統治するだろう」とあるのです。これが千年王国の信仰を生んだのです。 また、「世紀」という言葉は「センチュリー」とはニュアンスが異っています。「世紀」は日本文化の中ではぐくまれ、暦としての世紀を超えて日本文化に根づいています。「世紀のご結婚」や「世紀のイベント」などは、決して世紀をテーマにした結婚やイベントではありません。そして、世紀の変わり目の結婚やイベントでもないのです。これらの「世紀の」は「一生に一度あるかないかの」と置き換えてもいいと考えられます。世紀は百年間であり人間の寿命に近いというのがその理由です。そのために、一生に一度しか体験できないような出来事を「世紀の○○」というのではないかと思えるのです。最近のニュースを見ても故ダイアナ元イギリス皇太子妃のドレスの競売を「世紀の競売」、三千年に一度というヘール・ボップ彗星の天体ショーを「世紀の天体ショー」、香港返還のイベントを「世紀のイベント」などといっています。

 また、政見放送などでも「二十一世紀に向けて」などとよく言われますが、それらを検証すると2100年までの百年間を見据えたものは少ないようです。むしろ21世紀に生き残る自分の生活のイメージを尊重した個人的な未来観に立脚しているのです。世紀というものが人間の寿命と重なると同時に、祖父母と父母と自分と子供をつなぐ三世代から四世代の長さとも合致して、現世でひいおじいちゃんがひ孫に向かって思い出話を自慢できるのが世紀です。

 世紀越え体験をする人々の多くが、21世紀の半ば頃にはこの世にいません。「21世紀に向けて」とは一体どこに向けているのでしょうか。四十歳で凶弾に倒れたジョン・レノンは最後のラジオ番組で「生きていれば希望がある」と話していましたが、「21世紀に向けて」という言葉には、20世紀末に生きている大人たちが子供たちに送る愛や希望ではないかと思えるのです。

 それに対して、ミレニアムはあまりにスケールが大きいようです。千年というスケールは百年というスケールとは大きく異なります。千年というスケールでとらえると紫式部、エジソン、コロンブス、ガンジー、ナポレオン、ならびにディズニーなどを一つのまとまりとして傾向を示していく必要が生じます。百年の傾向を示すことより千年の傾向を示すことの方がはるかに難しいといえます。

 しかしながら、西暦2000年の到来は世紀という百年のスケールだけではなく、ミレニアム(千年期)という千年のスケールで考えることができる絶好のチャンスとなっています。多くの宗教で千年というものは大切な意味を持っています。また、哲学の世界でもプラトンが「魂は千年目に回帰する」といっています。千年という時間の長さは、宗教や哲学によってしか人間の時間感覚と整合性を持たせることができないともいえるのです。また、千年というスケールは、人類と地球との関係を考えるのに適したスケールであるともいえます。

 最後に、十年以上前の辞書でセンチュリーとミレニアムに関連する単語を調べた結果を示しました。ミレニアムには千年紀という訳がないことがわかります。ちなみに、最新のワープロソフトでも千年紀と変換するものはほとんどありません。「千年紀」は考古学者などを除き、一般の人々が日常生活でほとんど使うことのなかった言葉なのです。

 

ミレニアムとセンチュリー(研究社 新英和中辞典 四訂版より抜枠)

 

millenary:(形容詞)千の、千からなる、千年(期)の(名詞)千年間、千年祭

centenary:(形容詞)百年(間)の、百ごとの、百年祭の(名詞)百年間、百年祭

millennial:(形容詞)千年間の、千年期の

centennial:(形容詞)百年ごとの、百年間の、百年祭の(名詞)百年祭

millennium:(名詞)千年間、千年期、千年祭

      至福千年(the millennium)(特に幻影としての)黄金時代

century:(名詞)一世紀(百年)


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